2012/10/05

ドーナツのない穴



多摩美芸祭2012
11/2-4 "ドーナツのない穴"  at デザイン棟中庭
http://nonaiana.tumblr.com/

コンセプト文より (参加アーティストである川内理香子さんとの共同執筆)



ドーナツの穴は、周りの生地が形づくる。

周囲によって「発生させられた」穴。
生まれてしまった空洞。

ドーナツの穴は、何かが取り除かれた跡の、「痕跡」ではない。
「何かがそこにあった」という墓標でさえもない。

もともと、そこにはなにもなかった。
「なにもないところ」から、出現した空洞。

穴はなにも主張しないが、穴についての物語が周囲から呟かれる。
圧倒的な断絶の、孤独な物語として。

空洞は空洞として、その周囲にドラマを生み出す。

ドーナツの生地によって、穴という空間が出現するが、
穴という空間が、ドーナツを出現させるとも言える。

もともとは空気だったところ、これからも空気であるところから、
なにかが次々と生み出されていく。

ドーナツの穴は周りに形づくられる。
その穴の中には空気もないようだ。

まるで、ないことすらないようだ。

「ない」ことすらない場所。

空洞だけの景色。

(私はそれが見たい)